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東京地方裁判所 昭和41年(わ)226号 判決 1966年7月28日

本店所在地

東京都台東区浅草一丁目二八番三号

株式会社 小町屋本店

(代表者代表取締役 伊藤米三)

本籍

東京都台東区浅草一丁目三三番地

住所

同都中央区銀座二丁目二番地

会社役員

伊藤勝三

大正九年三月一二日生

右会社および右の者に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官山口悠介出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

被告会社を罰金四、五〇〇万円に、

被告人伊藤勝三を懲役六月に、

各処する。

被告人伊藤勝三に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は、東京都台東区浅草一丁目二八番三号に本店を置き、かもじ、かつらの製造販売等を営業目的とする資本金二、〇〇〇万円(昭和三七年三月一日現在六〇〇万円、同年三月一五日一、〇〇〇万円、同三九年五月一六日二、〇〇〇万円に各増資)の株式会社であり、被告人伊藤勝三は右会社の取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、同被告人は伊藤米三と共謀して、被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的で、売上を除外して簿外預金を蓄積するなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ

第一、昭和三七年三月一日から同三八年二月二八日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が五四、三五六、五一三円であつたのに、同三八年四月三〇日、同区浅草蔵前二丁目八番一二号浅草税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七、七五八、三八六円であり、これに対する法人税額が二、五四八、九二〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額二〇、二五六、五七〇円と右申告額との差額一七、七〇七、六五〇円を逋脱し、

第二、同三八年三月一日から同三九年二月二九日までの事業年度において、被告会社の実際所得額が五六、八二〇、一四二円であつたのに、同三九年四月三〇日前記浅草税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一五、四一七、一六三円であり、これに対する法人税額が五、四六二、三八〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて、被告会社の右事業年度の正規の法人税額二一、一九二、六九〇円と右申告税額との差額一五、七三〇、三一〇円を逋脱し、

第三、同三九年三月一日から同四〇年二月二八日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が四九五、〇〇四、九五三円であつたのに、同四〇年四月三〇日前記浅草税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一一九、五四四、三〇二円であり、これに対する法人税額が四二、八八一、八五〇円である旨の虚偽の申告書を提出しもつて、被告会社の右事業年度の正規の法人税額一八五、五五三、〇七〇円と右申告額との差額一四二、六七一、二二〇円を逋脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実を通じて、

1  被告人伊藤勝三の当公判廷における供述および検察官に対する各供述調書

2  大蔵事務官の同被告人に対する各質問てん末書

3  同被告人作成の各上申書

4  古石勝美、小泉俊雄、川田喜美、伊藤ふじ、伊藤米三の検察官に対する各供述調書

5  北村正夫、倉持千代作成の各上申書

6  大蔵事務官作成の「簿外預金各期末在庫高明細表」、「本店ビル建築費公表簿外対照表」および「定期預金明細表」とそれぞれ題する各書面

7  登記官作成の登記簿謄本

8  押収してある18期補助元帳二綴(昭和四一年押第九二八号の11の1、2)、売上日記帳二冊(同押号の29の1、2)、法人税申告書類三綴(同押号の40ないし42)

判示第一の事実につき、

9  川田喜美作成の上申書(三菱銀行雷門支店輸入保証金の処理について)

10  同人作成の上申書(第一七期たな卸計上洩について)

11  高橋ふみ子作成の上申書

12  大蔵事務官作成の証明書(自昭和三七年三月一日至同三八年二月二八日事業年度分)

13  大蔵事務官作成の「第一七期決算と総勘定元帳との不突合」と題する書面

14  大蔵事務官作成の「輸入ユーザンス関係」と題する書面

15  押収してある新築工事各自分担金明細(前同押号の45)

判示第二の事実につき、

16  内野良和の検察官に対する各供述調書

17  同人作成の昭和四一年六月一六日付各上申書

18  小林要三作成の上申書

19  大蔵事務官作成の証明書(自昭和三八年三月一日至昭和三九年三月二九日事業年度分)

20  株式会社大生相互銀行浅草支店名義の「証」と題する書面

21  押収してある家賃領収証一冊(前同押号の12)、諸計算書一綴(同押号の30)覚帳一冊(同押号の38)、工事請負契約書一綴(同押号の44)

22  押収してある御見積書写一綴(同押号の46)

23  前掲9、13、15の各証拠

判示第三の事実につき、

24  北村正夫の検察官に対する各供述調書

25  内野良和作成の昭和四〇年一二月二七日付上申書(東京銀行浅草支店支店長代理日置祥弌作成の証明書添付)

26  同人作成の前同日付上申書(後綴)

27  雑賀かつ子作成の上申書(上申書とあるは誤記と認める)

28  大蔵事務官作成の「第一九期末計上洩在庫高明細表(製品、商品)」と題する書面

29  浅草税務署長作成の「青色申告書提出承認の取消について」と題する書面

30  押収してある第19期精算表一綴、償却資産調書一袋(前同押号の17、18)

31  前掲16、21の各証拠

(法令の適用)

判示第一、第二の各所為は、昭和四〇年法律第三四号附則一九条により、同法による改正前の罰則を適用すべく、被告会社については各右改正前の法人税法四八条、二一条一項、五一条一項に、被告人伊藤勝三については各同法四八条一項、二一条一項に、判示第三の所為は、被告会社については、法人税法一五九条、七四条一項二号、一六四条一項に、被告人伊藤勝三については同法一五九条一項、七四条一項二号に該当(なお判示第一ないし第三の各所為につきいずれも各刑法六〇条を適用)するところ、以上はそれぞれ刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により所定罰金の合算額の範囲内で、被告人伊藤勝三については所定刑中各懲役刑を選択し、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、被告会社を罰金四、五〇〇万円に、被告人伊藤勝三を懲役六月に各処し、被告人伊藤勝三に対して、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

なお、量刑については、被告人らに有利には、被告人らが本件犯行後卒直にその非を認め、本件捜査にあたつては終始これに協力していること、本件後判示第一、第二の各逋脱について、その本税を完納し、判示第三の逋脱についても、その本税の一部を納付し、残余の納付についても誠意を示し、遠からず完納の見透しがあること、判示第三の罪については、当時資金的に納税の見透しがつかなかつたため、所得の一部を次期に繰り越しているのであるが、それが犯罪にあたることは当然としても、事業の経営者にとつては同情に価いする事情とも考えられること、また不利にはその逋脱が三期間に亘り、その額も合計一七六、一〇九、一八〇円という巨額に達していることなどの諸点を特に考慮した。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 大関隆夫)

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